2021-08-12

果たせなかった言霊

私が初めてアニマルコミュニケーションのセッションを受けた時のこと。 
琴が2歳、15年前のことだ。

私がアニマルコミュニケーションを学ぶ前で、興味を持ち始めた時で、本当は先輩犬の風太の分で予約をしていたのだが、風太が急遽入院したので、代わりと言っちゃなんだが琴で受けさせてもらうことになった。 

セッションでは、『オーラリーディング』が行われ、事前に提出していた私たちから琴への『質問への答え』をもらい、必要であれば『過去世』も伝えられ、それらを総じて琴にとって必要であるとされる『言霊』が授けられる。

私達夫婦が兼ねてから疑問に感じていたことは、琴と一緒に家の車に乗っている時のことだ。

普通に乗っている間は静かにしているのだが、ブレーキを掛けギアをバックに入れると急に怯え出してキュルキュルと鳴きあたふたとうろたえだすのだ。そしてハンドブレーキを引くと決まって急いで運転者の膝に飛び乗ってくるのだった。

なぜそうなってしまうかは、過去世も関わっているとのことで1世代前の過去世についても教えてもらった。その過去世の体験によって植え付けられたネガティブなプログラムを解くために必要な言葉が『言霊』だった。


言霊は三つの文になっていたが、そのうちのひとつに

『絶対にパパとママが看取るからね』

というものがあった。


私は内心、「え、もう死ぬ時のことを言うの?」と思った。



琴の過去世の犬は大型犬で、カリフォルニアに女性と住んでいて、ある日女性が運転するピックアップトラックの荷台に乗っていた。女性が車を停め道路を横切ろうとした時、車にはねられてしまった。犯人は逃げた。犬は荷台に繋がれていたままだったので、女性の元に駆け寄ることもできず、女性は搬送されて亡くなってしまった。
女性は離婚していて、二人いた子供の親権は元夫が持っていて独りだったので、彼女の両親が犬を引き取った。両親は結局経済的にもその犬の世話ができない、との理由で犬を手放すことにし、犬は安楽死させられた。

このことから、琴は飼い主の私が心配でしかたなく、また飼い主がいなくなってしまうと自分の生も大幅に変わってしまう…という強い不安感と恐怖と悲しみがネガティブなプログラムとして魂に刻まれ、現世に影響を及ぼしているとのことだった。

『車が止まった→飼い主が外に出る→飼い主が危ない!→ゆくゆくは自分も危ない…』
というふうに、琴の魂が反応していたということだ。

なので、「今世ではそういうことはない、車の運転も、車から降りた後も十分に気をつけるから、何があっても琴とずっと一緒だから、絶対手放さないから」と伝え続けるといいとアドバイスを受けた。

そして授けた言霊を言ってあげると、魂が癒され、徐々に今抱いている不安も和らいでくる、と言われた。


私はそれを信じ、それらの言葉をよく琴に話していた。

まだピチピチなのにもう看取る時点のことに言及するということに若干奇妙な感じはしたのだけれども、壮大なスパンで生を捉えた大事な話だとも思い、また自分としても琴を看取りたい気持ちは当然あったから、律儀に琴に言い続けた。

すると、琴が車内でうろたえ膝に乗ってくる問題は徐々に和らいでいき、やがて無くなった。
私がちょっとでも離れるとピーピー言っていたのもよくなっていった。

彼女が生きていく上で安心感が増したのならよかった、と思った。



…しかし、現実として、私達は琴を看取れなかった。



嘘ついてしまった。

私は、琴に嘘をついてしまったんだ。



ずっと、ずっと「看取るからね」と言ってきて、ずっと一緒に生きてきて、一番肝心の最後のとこで。



私、授けられた言霊を信じたせいで嘘つきになってしまった。



私は看取りたかったけど、琴の魂は看取られる選択をしなかった。
それはわかるし納得せざるを得ない。


では、肉体としての琴は?

私とべったりだった琴。超ママっこだった琴。
入院した時も面会に行くと抱っこをせがみ、離れたがらず、家に一緒に帰りたがった。

肉体の琴は、意識が混濁している時でさえ、病院のケージから出て、私と一緒に家に帰りたかっただろう。


やるせない。


せめてこう考える。

琴が最後の発作を起こし入院するまでは、家に私とずーっと一緒にいたのだ。
発作は夜のベッドルームで起こった。私はそこからずーっと琴を抱きしめていた。
意識のある最後の瞬間、私は琴といたし、抱きしめていたんだ。




このことで私は学んだ。


結局未来のことは誰にもわからない。

どんなに透視できるだの霊感があるだのチャネリングができるだのメッセージが受けられるだの占えるだの言っても、100%わかることは、無い。



看取れるか、看取れるかなんて、わからない。

どれだけ生きるのかも、わからない。

どんなに「看取るぞ」とか「長生きするぞ」と決めていても。



だから私が今後アニマルコミュニケーションをして言霊を伝えることがあるならば、絶対に未来を約束するような言霊は使わないことにしようと決めている。



私のように、やるせない思いをする必要はない。



私は一番最初にそこの先生に学んで大変勉強になったし感謝しているが、学んでいる時にどうしても馴染めなかった方法があった。

それは、飼い主にわかってもらうためにあえてインパクトの強いことを言ったり言わせたりすることだった。

それは例えば、多頭飼いの動物の中である子とある子ではどっちが好きか飼い主に質問してみたり、こうして死ぬ時のことだったり。

確かに、ショック療法みたいに、こういったふだんあまり口にしないことはインパクトが強過ぎて心に刺さってきて、自分で初めて認識する体験にもなって、記憶にしっかり刻まれて、それまでより視野が広がる、とは思うので効果的ではある。嘘やインチキでもないし、それだけ重大なことであることをわかってもらいたくて、よかれと思ってのこととも重々承知している。

でも、「どっちの方が好きか」という質問は、動物もしっかり聞いていて傷ついているのを何度も見てきたし、生死に関わることで約束を果たせないことだって起き得るのだ。


アニマルコミュニケーションは誰のためにやるのか。

第一に動物のためではないのか。

動物のことを一番に考えれば、飼い主にショック療法的にインパクトを与えることによって、うまく作用する時はいいが、かえって動物の気持ちを傷つけたり大事な約束を守れなくするなんて、本末転倒になってしまうのではないか。

だから、私は故意に飼い主さんにショックを与えるようなアニマルコミュニケーションは絶対にやってはならないと思っている。それは傲慢だし、本来の目的を見失っている。
(これは、動物さんが伝えてきたことを伝えたことによって飼い主さんが何かしらショックを受けることとは違う)


飼い主さんにわかってもらう方法も伝え方も他にいくらでもある。


私は私のルールと優しさの種類でアニマルコミュニケーションを行いたいと思う。


2013.12.10 in New York 琴9歳