2021-07-20

とわの独立心

とわに初めて会った時、「こりゃずいぶん独立心のある子だな」と思った。


まだ歯茎しかないとても小さな顎で私の指を甘えて噛んでくる力がとても強く、可愛らしいけれど、落ち着いた、少し冷めたような目つきをしており、媚びることも愛嬌を振り撒くこともなく一定の距離を自分からとって保つ感じ要は今まで暮らした犬にないタイプだった。






ところがうちに来るとすぐさま私を全身全霊で信じて頼るようになり、「よくもまあ、まだよく知りもしない人間をここまで信じて頼ってくれるものだな」と感心するくらいだった。

私としては、今まで長年共にした先住犬たちに比べると、まだ知り合って間もない、得体の知れない存在に感じていたからだ。






とわは、日に日に体をくっつけてきて甘えるようになった。

お腹の上、太ももの横、膝の上。

とにかく抱っこ抱っこ、か、ぴとっとくっついてくる。

こんなに甘えん坊なんて

最初に感じたあの「独立心」は何だったのだろう?



バタバタと子犬時代を過ごし、ようやく散歩に出るようになって、最初はよちよちやっていたが、段々と周りに対して警戒心が強くなってきたようで、何かにつけて吠えるようになっていった。


切り株を見ては驚いて吠え、家の玄関から出てきた人に吠え、犬を見かけては吠え、ベビーカーに吠え。


こ、これは今まで無い、いわゆるガウガウ犬では?と嫌な予感がした。



過去、友達の家の犬たちが他の犬と仲良くできず吠えてばかりいて困る、散歩に行きたくないほど、などという話を聞いて、


「それは飼い主のやり方や影響に寄るんじゃないかな、やりようによって、心の持ちようによって変わるんじゃないのかな」


なんて思っていたけど、そんなふうに思ってごめんなさい、と謝りたい気持ち。


とわちゃん、どうやっても、ガウガウ、ギャーギャー、だもの。


初めは世間に恥ずかしい気持ち、途方に暮れる気持ち、一緒いるそらが(彼は人にも犬にもフレンドリー)他の犬と出会っても挨拶させてあげられなくなって申し訳ない気持ち。


やがて散歩に出るのが億劫になる。冬は一日一回にしてしまった。今までならあり得ない。


そうはいっても段々と私も図太くなって周りの目も気にしないようにできるようになってきて、恥の気持ちも減っていった。


それでも正直なところ、ものすごくイライラするし、ぐったりと疲弊する。

怯えて後ろに隠れるとか逃げ腰になるとかならまだしも、ギャースカ吠えて相手に突進しようとグイグイ前に出る。リードが無かったらどうするの?と思う。よその犬が遠くにいても吠え立て、すれ違う時は気が触れたようになる。



この件について、何度も彼女とアニマルコミュニケーションをして質問した。


そこで、彼女がいつも言うには、


「自信がないの。もっとすごくならないとだめなの」

「自分でやるの。自分で自分を守るの」


ということ。



ここが、こういうとこが、彼女の独立心たるところか。



私は信頼されてないんだな~、頼ってくれたらいいのになぁ、守るのになぁ、と思うのだけれど、先日書いたように、私は日頃大変だから大変と言っていて、それが、彼女にしてみれば「大変そうな人に『助けて』とか言えないじゃん?」と、痛いところを突いてきた。


大変じゃないように生活を組み立て直して余裕を持てるようにしたり体力温存したりしようとしている最中なのだが、ふと、彼女と初めて会った時に感じた「独立心」について考えてみると、ちゃんと独立心ある子であり、あの時感じたことは間違ってなかったんだな、と思う。


彼女は意思が強く求めも強く興奮しやすいが、とても物分かりがよい。

分かると「あ、そ」とすぐさま引く。

こちらも迷わずきちっと意図をはっきりさせさえすればいい。

家ではとろけるようなシュガーちゃん、といった感じ。



私は大変じゃないように生活や心を整える努力をし、余裕を持ち、淡々と止まらずに歩き続け、いつしかとわが自分を守ることばかりに神経を使うのではなく(もちろん時と場合によって動物的な防御反応は否定しない)、横にいるママがいるからまあ大丈夫か、と思う時が増えてくれたらいいなぁ、と思う。